[インタビュー] ニック・シュワブ氏インタビュー Alexa スキル Learning Day #Alexadevs #Alexaラーニングデー

[インタビュー] ニック・シュワブ氏インタビュー Alexa スキル Learning Day #Alexadevs #Alexaラーニングデー

Alexaスキルでテスラ購入まで成功した、ニック・シュワブさんにインタビューしました。
Clock Icon2020.01.07

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せーのでございます。

Alexaでスキル開発に取り組む個人の開発者さんは日本でも増え続けています。しかし、モバイルアプリ作成者やYoutuberのように、作ったコンテンツによって生活ができるほどビジネスとして成功している人は殆どいません。

現在ではAlexaスキルには課金システムが使えますので、自分の作ったスキルやコンテンツを買ってもらうことが可能です。また、人気のあるスキルにはAmazon社からリワード(報奨金)が送られます。つまり、やり方によってはスキル開発をビジネスとして扱えることができるはずです。

今回はアメリカにてRain Soundsという環境音スキルをヒットさせ、現在は個人で会社をおこして、ビジネスとして世界中のリージョンにスキルを提供しているInvoked Apps社のニック・シュワブさんにインタビューを行いました。ニックさんと言えば「Alexaスキルでテスラを買った男」として有名な方ですね。

ニックさんは先日東京で行われた「Alexaスキルラーニングデー」においても「カスタマーに愛されるスキルの作り方とスキル内課金でのビジネスの作り方」というタイトルでスピーカーをされました。

[レポート] 「カスタマーに愛されるスキルの作り方とスキル内課金でのビジネスの作り方」-Alexa スキル Learning Day #Alexadevs #Alexaラーニングデー

フィードバックを取り入れて常に改善する

ーよろしくおねがいします。プレゼンテーションではRain Soundsに行くまで色々な種類のスキルを試行錯誤した事が語られました。普段スキルを作るアイデアは日常のちょっとした欲求などが多いのでしょうか?

Nick: 基本的には日常生活での自分自身のニーズというものが元になることが多いです。最初に作った「Bargain buddy」も複数のWebサイトを利用したいというものでした。「Rain Sounds」も私の隣人が非常に騒音を立てるので、安眠したいということでそれをブロックするために作りました。

ーRain Soundsが跳ねたのは先行者利益の部分が大きいと考えていますか?それともフィードバックを細かく拾って改善したことが大きいと思いますか?

Nick: 両方だと思います。このスキルをリリースしたのは2016年10月なのですが、その当時環境音を流すスキルというものは他にありませんでしたので、その部分でかなり注目して頂いたということはあるのですが、その後は「こういった音を聞きたい」といったフィードバックを取り入れて改善、拡張を重ねていったことが人気を伸ばしていった原因であると考えます。

重要なのはクオリティ。日本市場には大いにチャンスがある

ー現在日本のスキル数は3000を超えたところで、アメリカのスキル市場に比べるとまだ駆け出しの時期です。ここにチャンスはあると思いますか?

Nick: 大いにあると思います。Alexaはアメリカが発祥の地ですので、立ち上がりが早かったわけですが、現在日本のマーケットでも有償のスキルというものに非常に興味が出てきているところだと思いますし、テクノロジーについても非常に土壌がありますので潜在性はかなり高く、期待できると思います。

- 日本では個人でそのまま開発する人が多いです。会社を起こしたのはなぜですか?

Nick: 私も最初のうちは個人名のまま登録して運用していたのですが、Amazonより開発者向けのRewards(報酬)システムがあるという連絡をもらい、翌月から細かい収益が上がるようになってきましたので、これはビジネスになる、と判断して会社を起こしました。

ー環境音の元ネタは買ってるのですか?作っているのですか?

Nick: 自分自身で録音したものもありますし、デジタル化して作成したものもあります。他よりライセンスとして購入したものもあります。環境音の数が現在膨大になっていますので、適宜組み合わせて確保しています。例えば雨の音などは直接録音したものを使用しています。ただ重要なのは音のクオリティですので、一定の基準に満たないものは使いませんし、ノイズなどはデジタル的に消した上で使用したりしています。

自分自身のニーズを解決するスキルを作る

ー3回使われたらアップセル、という話がありました。スキルの利用頻度と課金額は比例しますか?また「3回」というのはどういう根拠ですか?

Nick: 3回、という数字はテストを重ねた結果導き出しました。人によっては7回だったり15回だったりするのですが、3回くらいでアップセルを勧めた場合が一番結果が良かったため3回としています。

ーコンテンツを追加して買い切りにする方法もあったと思いますが、サブスクリプションという方式を選んだのはなぜですか?

Nick: やはり現在のストリーミング配信にかかるコストを考えた場合、買い切り1回よりも財務的に安定する、という判断です。

ーストリーミング量が月間4ペタバイト(※注)というのは相当ビックリしました。Cloudfrontを挟むなど技術的にストリームをコストエフェクティブにする工夫はされていますか?
※Rain Soundsスキルを通じてユーザーが環境音をストリーミングしている量は月間で4ペタバイトに達する

Nick: APIの部分はLambda、DBにDynamoDBを使い、オーディオの管理にS3を採用しています。他にもエッジ部分に色々な技術的な工夫をしています。

ー技術的、といえば、先日のre:Inventで細かい開発方法が発表されていた「Alexa Conversations」は開発現場に大きなインパクトを与えると思います。

Nick: 開発自体のプロセスだけではなく、スキルのディスカバリー(どれだけ細かい発話に対応できるか)やエンゲージメントが変わってくると思います。適切なところで適切なものを出していく、というAmazonの考え方の中でも全体として大きな変化は期待できると思います。

ーこれからスキルをビジネスに昇華させたいと考えている日本の開発者にいくつかヒントを頂ければと思います。多くのユーザにリーチするために何か工夫していることはありますか?(リリースや更新のタイミングなど含め)

Nick: 一番重要なのは自分自身で感じるニーズを解決するスキルを作ることです。自分自身のニーズを解決するためにはクオリティの高いものを作ろうとします。クオリティの高いものを提供すれば、最初にリーチする人が例え少なかったとしても、その人達が口コミで広めてくれる効果もあります。

アップセルは慎重に。ユーザーのフィードバックを注視する。アップデートはPrime Dayの前

ースキルをアップデートした際に今までで一番手応えの良かった(ユーザー数が伸びた・継続利用が増えた)機能・アイデアはどのようなものでしたか?

Nick: ユーザーに対してアップセルをかける際には慎重になることが重要です。スキルにアクセスしてもらったユーザーに焦ってすぐに有料プランを勧めるのではなく、ゆっくり、慎重にタイミングを見て勧めていくことですね。

ースキルをアップデートする際に、スキルストアのレビュー以外に何を参考にしていますか?

Nick: 具体的にトラフィックが急増するのにはタイミングがあります。Amazonで言えばそれはPrime DayであったりBlack Friday、クリスマスといったその国、地域ごとのショッピングシーズンを狙うのが良いかと思います。

国による違いはそんなに感じない。大事なのは情熱を持って作り続けること

ーRain Soundsは現在多言語展開をしています。それぞれの国によって特徴はありますか?

Nick: そうですね、トラフィックなどの違いもあるのですが、一つ注目している違いはレーティングです。これは「こういった機能が欲しいのに」といった要望の違いなどが、例えばアメリカでは4.8のものがヨーロッパでは3.8になる、などのレーティングの違いを指標にしています。

ーその違いには文化の違いなどは感じますか?

Nick: Rain Soundsなどで言えば、例えばインドなどでは特定の音が人気がある、などがあったりしますが、基本的にはすべての国で同じものを出しています。

ーエンジニアとして楽しんでものを作る、というマインドと、ビジネスとしてシビアに判断していくことが非常にマッチしていると感じました。この2つを両立させるためにはどうしたらよいか、日本の開発者にメッセージをお願いします。

Nick: 自分がこれをどのくらい開発したいのか、という情熱がまず第一にくるべきです。私もまず自分の困難を解決したい、というモチベーションがあったからこそ情熱を持って開発を続けることができました。利益が出たのは偶然の部分も大きいです。ですので、まずは作りたいものを情熱を持ってこだわることです。

まとめ

ということでニック・シュワブさんのインタビューをお届けしました。元々趣味でスキル開発をしていて、最終的に会社を経営するところまでビジネスとして成長させたニックさんですが、何度も繰り返し言っていたのは「自分の作りたいものをクオリティ高く、こだわって作ること」でした。最初からマスは狙わずに、まずは自分が良いと思うものを作っていくのが成功へのカギなのかもしれませんね。

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